Vault オブジェクトを使うと、親子 (階層化) および参照 (非階層化) 関係を含むさまざまな関係を設定することができます。参照関係は、他のオブジェクトを参照したり、同じオブジェクトに戻って参照したり (自己参照) できます。親子関係は、通常 1 対 1 または 1 対多ですが、3 つ目のオブジェクトを使用することで、多対多の関係を作成することができます。
標準システム管理オブジェクトは、参照関係または親子関係 (親として) にしかなれません。子オブジェクトにはなれません。
親子関係
親子関係は階層化構造で、依存するオブジェクトレコードの構造を作成することができます。子オブジェクトのレコードは、親レコードコンテクスト内にのみ存在するため、一意である必要はありません。
例: PromoMats
カスタムマーケティングキャンペーンオブジェクトは、製品との親子関係に存在する可能性があります。単一の製品は複数のキャンペーンを持つことができますが、各マーケティングキャンペーンは単一の製品に属します。マーケティングキャンペーンは、同じ製品を共有する場合以外は、一意である必要がありません。製品の発売と呼ばれるマーケティングキャンペーンは複数の製品に存在します。
例: eTMF
標準の治験実施施設オブジェクトは治験実施国との親子関係にあり、一方治験実施国オブジェクトは治験の子となります。各施設は単一の国に属します。各国レコードは単一の治験に属します。治験実施国は、同じ治験を共有する場合以外は一意である必要はありません: 米国はすべての治験に存在する治験実施国レコードです。このように、異なる治験実施国と治験レコードに属す限り、全く同じ施設が複数存在する可能性があります。
参照関係
参照関係では、親子関係の依存動作を使用することなく、1 つのオブジェクトから別のオブジェクトにメタデータをリンク付けできます。これらの関係は非依存型であるため、関連オブジェクトのレコードは一意である必要があります。
例: PromoMats
マーケティングキャンペーンオブジェクトは、エージェンシーオブジェクトに参照関係があります。エージェンシーは、単一マーケティングキャンペーンのコンテキスト外に存在し、1 つのエージェンシーが多くのキャンペーンに関連付けられます。各エージェンシーは、マーケティングキャンペーンの子ではなく、独立したエンティティであるため、エージェンシーを重複して作成できません。
例: eTMF
治験実施施設オブジェクトは、場所オブジェクトに参照関係があります。個別の施設が単一の国と治験に存在する一方、場所は独立して存在します。場所を一意と定義する追加属性として親を持たないため、場所は一意である必要があります。
自己参照関係
自己参照関係を使うと、親と子が同一のオブジェクトフィールドを共有するオブジェクトレコードの階層を作成することができます。自己参照関係の個別のオブジェクトレコードは一意である必要があります。「循環」関係を作成することはできません。
例: PromoMats
カスタム地域オブジェクトは、国を表すレコードのほかに、より広い地理的領域を表すレコードも持ちます。フランスとドイツは親としてヨーロッパ地域を参照し、一方日本と台湾は親としてアジア太平洋地域を参照します。この例では、これらのレコードのフィールドが非常に似通っているので、親子関係で 2 つの別々のオブジェクトを作成するのではなく、単一のオブジェクトを使用しています。
例: eTMF
標準のマイルストーンオブジェクトは、自己参照関係で機能します。施設終了マイルストーンは、親として国終了マイルストーンを持ち、一方国終了マイルストーンは、親として最高レベルの国終了を持ちます。マイルストーン自体は、同じオブジェクトフィールドのセット (開始予定日、完了予定日など) を持つため、これらは、親子関係で複数のオブジェクトではなく、自己参照関係を持つ単一のオブジェクトとして設定されます。
多対多の関係
多対多の関係では、2 つの親オブジェクトを持つ 3 つ目の関係オブジェクトを使用して、2 つの異なるオブジェクトの複数のレコード間に依存性を作成できます。この関係オブジェクトは単純にすることができ、標準フィールド (ラベルなど) と親オブジェクトフィールドのみを持ちます。関係オブジェクトは、その他のカスタムフィールドを持ったコンプレックスジョインである場合もあります。オブジェクトを関連付けるこの方法は、「単純な結合」および「複雑な結合」と呼ばれることもあります。
関係オブジェクトを有効にするため、両方の親オブジェクトも有効にする必要があります。1 つの親オブジェクトのステータスを無効に変更すると、Vault はそのステータス変更を関係オブジェクトにカスケードします。親オブジェクトのステータスを有効に変更すると、別の親がすでに有効である場合に、Vault はその変更を関係オブジェクトにのみカスケードします。
これらの関係オブジェクトにドキュメントフィールドを作成する場合、管理オブジェクトとして 1 つの親オブジェクトを選択し、関連ドキュメントフィールドがその他の親子関係に対して動作するようにします。
例: 単純な関係
カスタム関係は、製品と国の標準オブジェクト間に存在する場合があります。この関係は、製品が使用できかつ販売承認を受けた特定の国に各製品をリンク付けします。関係を作成するには、親オブジェクトフィールドを製品と国にして、新規カスタムオブジェクトの承認済み国を設定します。オブジェクトレコードには以下が含まれます:
ラベル | 製品 | 国 |
スペイン | Nyaxa | スペイン |
イタリア | Nyaxa | イタリア |
イタリア | CholeCap | イタリア |
米国 | CholeCap | 米国 |
承認済み国オブジェクトレコードのラベルと名前は、製品と国の組み合わせが一意である限り、一意にする必要はありません。
関連ドキュメントフィールドは、コントロールオブジェクトとして製品を使用して設定します。そうすることで、承認済み国フィールドは、選択された製品に関連する国のみを表示します。ドキュメントが Nyaxa 向けの場合、スペイン、イタリアのみが承認済み国に表示されます。
単純な多対多関係を作成するには:
- 関係を表すための新規オブジェクトを作成します。
- オブジェクトのフィールドタブを開きます。
- 作成をクリックします。
- 親オブジェクトのフィールドタイプを選択します。
- フィールドラベルを入力します。一般的に、このラベルはオブジェクトのラベルに一致しますが、これは必須ではありません。
- 親として使用するオブジェクトを選択します。これは、関係を作成する 2 つのオブジェクトのうちの 1 つです。
- 任意の作業: 必要に応じて追加オプションを選択します。詳しくは以下を参照してください。
- 保存をクリックします。
- 関係オブジェクトに 2 つ目の親オブジェクトタイプフィールドを作成します。
親オブジェクトタイプフィールドに使用される 2 つのオブジェクトは、これで単純関係に入ります。オブジェクト参照フィールドで、ドキュメントとオブジェクトの新規関係オブジェクトを参照することができます。ユーザに、親オブジェクトの 1 つを参照する関連オブジェクトセクションがある場合、Vault はレコードを関連付けるための追加ボタンを表示します。次に Vault は単純な結合オブジェクトレコードを自動作成します。
例: 複雑な関係
上の例とほぼ同じく、製品と国間に複雑な関係を設定することができます。この関係も、製品が使用できかつ販売承認を受けた特定の国に各製品をリンク付けします。ただし、関係オブジェクトは、承認ステータスやローカル名などの追加のメタデータを保持します。そのメタデータを収集するために、関係オブジェクトにルックアップまたはオブジェクト参照フィールドを追加することができます。
ラベル | ローカル名 | 承認ステータス | 製品 | 国 |
スペイン | Nyaxá | 待機中 | Nyaxa | スペイン |
イタリア | Nyaxa | 承認済 | Nyaxa | イタリア |
イタリア | ColeCap | 承認済 | CholeCap | イタリア |
米国 | CholeCap | 承認済 | CholeCap | 米国 |
関連ドキュメントフィールドは単純な関係と同じように動作しますが、ユーザは、承認済み国を選択する場合、またはドキュメントを探す場合にフィルタリング (承認ステータス、ローカル名) を選択することができます。
関係オブジェクトに一意性を定義する
関係オブジェクトが複雑な関係または単純な関係を表すかどうかによって、Vault は異なる一意性を定義・強制します。
- 単純: これらのレコードは一意である必要があります。Vault は、親オブジェクトレコードのみを使用して一意性を定義します。例えば、同じ製品と国の親を持つ2 つの関係オブジェクトレコードは、存在できません。
- 複雑: これらの関係では、各関係レコードに名前を入力する必要があります。デフォルトで、関係名はそれぞれ個別の親の組み合わせに一意である必要があります。管理者は、複雑な関係オブジェクトを設定し、一意性の代替制限を使用することができます。例えば、名前フィールドの値は一意である必要がありますのフィールドのチェックを外し、承認ステータスフィールドの同フラグにチェックを入れることで、管理者は、各親の組み合わせと承認済みステータスに一意となるようレコードを強制することができます。
関係を表示するには
管理者 > コンテンツ設定 > オブジェクトで、オブジェクト詳細ページの関係タブから既存の関係構造が表示されます。
このページは、「受信」または「送信」のいずれかとして関係を表示します。
- 受信関係:親子関係では、表示されているオブジェクトは親です。参照関係では、表示されているオブジェクトに別のオブジェクトが参照します。
- 送信関係:親子関係では、表示されているオブジェクトは子です。参照関係では、表示されているオブジェクトが別のオブジェクトを参照します。
自己参照関係は、受信と送信の両方として表示されます。
オブジェクトの統合の関係タイプは、表示中のオブジェクトが多対多関係にある親オブジェクトの 1 つであることを示します。
参照および親子関係を作成するには
オブジェクト関係を作成する場合、子または参照オブジェクトから開始し、そのオブジェクト内でフィールドとして関係を設定する必要があります。キャンペーンの例では、親子関係と参照関係の両方に対してマーケティングキャンペーンオブジェクトから開始します。製品およびエージェンシーの両方は、マーケティングキャンペーンオブジェクト内のフィールドです。多対多の例では、承認済み国オブジェクトから開始し、親オブジェクトフィールドを 2 つ作成します。
新規オブジェクト関係を作成するには:
- 管理者 > コンテンツ設定 > オブジェクトから、子または参照オブジェクトを開き、フィールドタブをクリックします。
- 作成をクリックします。
- フィールドタイプには、オブジェクトを選択して参照関係を作成するか、親オブジェクトを選択して親子関係を作成します。
- フィールドラベルを入力します。一般的に、このラベルはオブジェクトのラベルに一致しますが、これは必須ではありません。
- ステータスセレクターを使用して、フィールド (および関係) を有効/無効にします。親オブジェクトフィールドタイプではこれを無効にすることはできません。
- オブジェクトを選択します。
- 任意の作業: コントロールフィールドを選択します。
- 任意の作業: ユーザは常に値を入力する必要があります (必須) オプションを選択し、オブジェクトレコードを作成する管理者ユーザ向けにこのフィールドを必須にします。親オブジェクトフィールドタイプでは、この設定は常にオンになっています。
- 任意の作業: デフォルトリストとホバーカードに表示チェックボックスを選択して、管理領域オブジェクトレコードリストビュー、ドキュメントパネルのポップアップオブジェクト詳細およびオブジェクト検索ダイアログにフィールドを表示させます。
- 任意の作業: オブジェクトレコードを作成する管理者ユーザ向けに、カスタムヘルプコンテンツを入力します。
- 保存をクリックします。
削除ルールなどの一部のフィールド属性は、オブジェクトフィールドを作成して保存した後でのみ変更できます。これらの属性を編集するには:
- フィールドタブから、新規フィールドをクリックして、編集をクリックします。
- 任意の作業: 受信関係ラベルを変更します。Vault は、親または参照オブジェクトの詳細内のタブラベルとしてこの値を使用します。
- 任意の作業: 受信関係名を変更します。API 開発者は VQL クエリにこの関係を使用できます。
- 任意の作業: 削除ルールを変更します。このルールは、管理者が親/被参照オブジェクトレコードを削除する場合に、子または参照オブジェクトレコードの動作を決定します。
- 任意の作業: 階層的コピーを許可するチェックボックスを選択します。この設定により、親オブジェクトのレコードをコピーするユーザがこのオブジェクトに子レコードもコピーできるようにします。
- オプション: 基準 VQL 式を入力して、参照制限を定義します。
ルックアップフィールドを追加する方法
ルックアップフィールドは、親または被参照オブジェクトのフィールド値を子または参照オブジェクトに伝えます。
新しいルックアップフィールドを作成するには:
- 管理者 > コンテンツ設定 > オブジェクトから、子または参照オブジェクトを開き、フィールドタブをクリックします。
- 作成をクリックします。
- フィールドタイプにルックアップを選択します。
- フィールドラベルを入力します。しばしば、このラベルがデータの引き出し先のフィールドのラベルと一致することがありますが、必ずしもそうでなくてもかまいません。
- ルックアップ関係で、このフィールドに使用する送信関係を選択します。通常、これらは参照するオブジェクト用の名前です。
- ルックアップのソースフィールドで、被参照/親オブジェクトのフィールドを選択します。Vault は、このフィールドの値をルックアップフィールドに表示します。
- 任意の作業: デフォルトリストとホバーカードに表示チェックボックスを選択して、オブジェクトレコードリストビュー、ドキュメントパネルのポップアップオブジェクト詳細およびオブジェクト検索ダイアログにフィールドを表示させます。
- 任意の作業: オブジェクトレコードを作成する管理者向けに、カスタムヘルプコンテンツを入力します。
- 保存をクリックします。
- どちらのオブジェクトにも既にレコードがある場合、これらのレコードが自動的に更新されることを通知するダイアログが開きます。この処理には時間が掛かりますが、完了すると通知を受け取ります。
ドキュメント参照フィールド
ユーザがドキュメント参照フィールドを設定して使用するとき、Vault はオブジェクトレコードと個々のドキュメント、または個々のドキュメントバージョンの間に関係を確立します。これらの関係はオブジェクト設定に表示され、ユーザがオブジェクトページレイアウトを設定して、これらの関係にドキュメントを表示することができます。しかし、この関係は、ドキュメント情報ページやドキュメントレポートなどドキュメントの詳細には表示されません。
制限
デフォルトで、各オブジェクトに最大 20 件のオブジェクト関係を設定することができます。